いわゆる地獄の具体相は、仏教と在来宗教との融合によって、中国では隋唐の頃、日本では平安時代に形成されてゆきます。中国の孟婆、日本の脱衣婆などは、この時期以降に形成されてゆく新しいものですね。旬の夏野菜で作る馬と牛(往路は馬で速く、復路は「牛で遅く」も、近世〜近代の新しい文化でしょう。黄泉国は中国の死者観に影響されていますが、未だ仏教の要素は認められず、その意味で古墳時代の感覚に近いものと思います。奈良末期〜平安初期に成立した仏教説話集の『日本霊異記』では、地獄に関する描写にヨモツヘグイが出てきます。仏教的地獄と在来信仰の冥界との混合は、この頃から次第に進んでゆくのです。