日本のように天皇のような権力者を神と見立てる国は、他にあったのでしょうか。また、この現御神的なあり方が、近代まで続いたのはなぜでしょうか。

日本人は天皇のことを特殊視してしまいがちなのですが、まず、そもそも中国皇帝自体が神的存在です。まず「帝」とは、中国古代においては、天上の主宰者そのものを意味していました。人間が辿り着くことのできる地位は「王」が頂点であり、「帝」は人間と意志が疎通できる相手でもない。しかし、この王をすべて平らげて天下を統一した戦国末の秦王政は、王の上に立つ神的存在として「皇帝」に初めて即位したのです。中国の場合、王朝交替は実力行使で、それが天の思想によって正当化されるという後付けを繰り返すわけですが、日本の場合は、これが血統によって正当化・正統化されます。いうなれば神話の世界を根拠にしているわけで、制度としては非常にプリミティヴであり、古代世界、民族世界の王に広くみられるパターンともいえます。