実証主義歴史学が主流となった現代では、教訓を重視する歴史の現在主義は非アカデミズムの世界でも存続しているとのことですが、例えば第二次世界大戦などから得た教訓は、今の学問では対象にならないということでしょうか。

現在の歴史学者のほとんどは、研究の実践と、個人としての政治的立場の表明は別々だと考えています。ですから研究自体においては、教訓的眼線を差し挟むことはしませんが(つまり、「この事実は現在における教訓となるだろう」といった結論の学術論文はほぼ存在しません。教訓の探求は、歴史学の命題ではなく、歴史哲学や倫理学のそれになっています)、個人としては、例えば自分が研究によって得た内容を何らかの教訓として利用する、ということはあるでしょう。