日本人には、自然破壊に対する自覚が希薄であるとのお話に頷きました。確かに、山や川にゴミを捨ててしまった部分もあると思いますが、富士山が世界遺産に登録されたのち、外国人観光客による汚染が問題となりました。果たして、外国人と日本人との間に、そこまで違いはあるのでしょうか?

ひとついえることは、まず、富士山がなかなか世界遺産に登録されなかったのは、ゴミ問題が原因であったということです。最近は外国人観光客によるゴミ問題が取りざたされていますが、そもそも、世界遺産登録を目指し始めた1990年代、富士山の五合目以上の屎尿やゴミ問題は深刻で、それゆえに「自然遺産」での登録を諦め、「文化遺産」としての採択を目指したという経緯があるのです。ゴミ問題はその後大きく改善されたはずですが、このような衛生観念の発達を「国民性」に結びつけ、アプリオリなものとしてしまう議論には注意すべきです。1970年代の公害のすさまじさを経験している世代には、このあたりは実感できるはずなのですが、この点もやはり忘却されてしまっているのかもしれませんね。