現代の子供に「妖怪をひとつ挙げてみて」と問うと、アニメ『妖怪ウォッチ』のキャラクターを挙げることが多いと聞きます。昔から伝わるような妖怪から認識が変わっているのが、切ないような気もして、伝承のあり方に疑問を持ちました。昔から伝わる言い伝えは学校で教わることも少ないので、守ってゆく意義や方法も考えてみたいと思いました。

大事なことですね。しかし、いわゆる〈伝統〉というものは、そうした形で時代ごとに変異してきたのだ、ということも重要です。現在一般に妖怪として認知されているものの多くは、江戸時代を遡りません。また近代の江戸懐古趣味や、場合によっては水木しげる以降の妖怪ブームによって、あたかも古くからあるかのごとくに創出されてしまったものも多いのです。現代の妖怪には、それが生まれた社会的背景、必要とされる文化的意義があります。単に否定して斥けてしまうより、子供たちが妖怪ウォッチのキャラクターを支持する理由について考察することのほうが、ずっと面白い気がします。