国際援助などで、先進国が科学的な裏付けを重視した方法を、援助の対象となる国へ導入することが、現地の人々の物語りの歴史を否定する結果となってしまい、そのことに対する不安や怒りが、ISなどのエスニック・ナショナリズムへ繋がっているように思います。現地の伝統を破壊してまで国際援助を行う意義はあるのでしょうか。

人道や人命に関わる問題は、非常に難しいですね。これはもう、意見交換をしてゆくしか方法がないでしょう。例えば、ある国の社会・文化的慣習がある階層の人々、ある性別の人々を抑圧し、その生命や安全な生活を危険にさらすことがあるならば、それが、同国の大多数のひとびとの支持する伝統であっても、介入する必要性はあると思います。上にも書きましたが、伝統は永久不変のものではなく、周辺の民族や国々との関わりのなかで、変転し続けてきたものです。少なくとも、「伝統は変えない方がよい」という選択肢には、至上の価値はありません。