文字系統図によるとエジプト文字を祖とするヨーロッパ、甲骨文字を祖とするアジアを比べてみて、前者の方が著しく発展しているように思われた。アジアは閉鎖的だったからなのか、民族数が少ないからなのでしょうか。

どうでしょうか。単純に枝分かれと増殖を発展として捉えてよいのか、という見方がまずあるでしょう。また、ヨーロッパとアジアの展開の仕方の相違は、表音文字表意文字の展開の相違なのであって、発展の高低ではないとみることもできます。また、中国で作られた漢字・漢文が表意文字として極めて完成度が高いものであり、同時に中国王朝がアジアの盟主である情況が長く続いたので、アジア各国・各民族はまず漢字・漢文文化を輸入し精通することに時間を費やさねばならなかった、それゆえに新たな文字を生産する必要性をほとんど感じなかった、というのが実情でしょう。日本のカナや朝鮮のハングル、ベトナムのチュノムなども、漢字・漢文を正統な文字・言語と位置づけたうえで、日常的な使用の便利や民間への普及を図って生まれたものです。文字の増殖の多寡は、それぞれの地域の具体的な歴史過程の相違による、と考えておいたほうがよさそうです。