トンパ文字の翻訳などは、どのように行っているのでしょう。

トンパ文字については、その読み方、書き方を伝承しているナシ族の呪師トンパが存在しますので、彼らへの聞き取り調査を通じて内容を理解することができます。現在では、調査と研究の積み重ねを通じて大部な辞書もできていますし、トンパ文字とそれを読み上げたナシ語(国際標音表記)、さらに現代中文訳を対照できる『納西東巴古籍訳注全集』全100巻も刊行されており(なんと上智の図書館に所蔵しています!)、研究のインフラ整備が進んでいます。ただし、講義でもお話ししたようにトンパ文字の意味再現は「隙間」が多いので、『全集』によって読み方が一定のものへ固定化されると、かえってトンパ文化の実相を歪めてしまう恐れもあります。その点、『全集』に依存しすぎない注意が必要です。