ヨーロッパ中世において、キリスト教を信仰していた庶民たちはラテン語で書かれた聖書を読むことができず、教父の説教などに頼ったが、当時のラテン語には文字の神秘性が付与されていたのだろうか。

そうですね、キリスト教におけるラテン語や仏教におけるサンスクリットなどは、次第に神聖文字・典礼文字としての要素を色濃くしていったものです。これは、神聖なものを記し語る言葉を日常のそれとは区別しようという、宗教における卓越化の表れと考えられます。世俗化に伴う「残存」としてだけでなく、積極的にそれらと決別してゆくことで、宗教としての発展を成就していったものでしょう。