新羅の王子が帰属を求めて日本へ来たというのが本当だとすると、そのメリットは何でしょうか。わざわざ日本に属する理由が思いつきません。

いや、アメノヒボコ伝承自体、やはり、史実として「帰属」を願い出たものと読むことはできないでしょう。『日本書紀』のほうにみえる帰属の経緯を語る具体的な記述は、恐らくは粉飾です。しかし、「弟に王位を譲ってやって来た」という言説形式は、自国で政治的に敗北した者が一時的に隣国に亡命し、その軍事的力を背景に復権を目指すという、中国の史書『春秋』三伝の頃からある表現に則っていると思われます。