渡来人の問題について、一方で差別し抵抗意識がありながら、一方で受容しあるいは信仰する心理が、正直よく分からなかったです。心のどこかで畏怖の念を抱いていたのでしょうか。

非常に難しい問題ですが、渡来人に限らず、人間は自分の日常的世界を侵犯する未知なるものについて、期待と拒絶という両義的な心理を持ちます。これは共同体の古代祭祀にも反映していて、村落の周縁=境界で行われる祭儀は、来訪神が善なるものであった場合にはこれを歓待し受け入れ、邪なものであった場合には拒絶して祓い除くものです。現存日本最古の仏教説話集である『日本霊異記』などをみますと、民間を遊行する僧侶が、上記のような閉鎖的感性から度々迫害を受けている様子を確認することができます。渡来系の人々に対しても、当初そうした意識が向けられたものと想定されます。