2015年に修訂される前の教科書は、なぜ認可されていたのですか。政府の考え方が変わったということですか。

そうです。2015年に適用された新検定基準には、「政府の統一的見解がある場合は、それに基づいた記述をする」との項目が、新たに付け加えられました。これは、例えばまったく政治思想の異なる政権が誕生した場合、そのイデオロギーに基づいて歴史記述の取捨選択がなされ、前回とは180度異なる教科書が出来上がってしまう危険があるという、極めて問題の多い項目です。また、政府の意向が学界の理解と異なっていても従わねばならないという、いわば専門研究の否定を意味するものでもあります。さらに、「教育基本法の目標(道徳心の涵養、伝統・文化の尊重、我が国と郷土を愛すること)に反する場合は不合格とする」という参考基準もあり、「愛国心」をどう解釈するかによって恣意的に運用されうる内容になってしまっているわけです。「旧土人保護法」の評価の件は、その危惧が現実のものとなってしまったことを示しています。