ランケは神という存在を用いて絶対的な基準を示していますが、現代では絶対的基準のような思想は、学問的には認められていないのでしょうか?

そうですね。近代は、啓蒙主義によって否定された神の絶対性を、科学という言葉で代替する試みがなされた時期でしたが、現在に至るポストモダン思想においては、近代の代名詞ともいえる客観性、法則性、普遍性、それらを体現するグランド・セオリー=大きな物語が、尽く解体され相対化されました。いまは、その裏返しとしての主観性、個別性、多様性、すなわちグランド・セオリーが取りこぼしてきたものに価値が見出されています。それだけ、現実主義的な、具体的なものへ注意が喚起されるようになったということです。