日本の実証主義への批判は、どの層からどのような理由で起こってきたのでしょうか?

史学史的な大きな流れからいうと、まずは導入時に近世的歴史認識に属していた人々から批判を受け、次いで皇国史観との間に軋轢を生じ、やがて勃興し始めたマルクス主義歴史学がその温床になってゆきます。唯物史観からの批判は戦後に至って加速し、そうしてこれから授業で取り扱ってゆく社会史、とくに言語論的転回の前後に根本的な批判が生じてくることになります。多くは、海外の歴史学の動向に目を配り、また隣接諸科学との協働を行っていた人々からの議論で、歴史学的権威の中心にあったような人々は、ほとんどそうした議論からは遠離った位置にいました。