芸能に関わる者が、世界中で差別の対象になるのはなぜでしょうか。現在では、逆にカリスマとして崇拝の対象になっていると思うのですが。

ひとつには、芸能者が生産とは無関係であり、同時に一地域に定住せず移動することが多かったことが原因です。古代にしても中世、近世にしても、領域権力にとって支配しやすい人間とは、農業生産をなし一地域に定住する人々です。彼らを戸籍などに登録して徴税対象とすれば、権力を運営する財政基盤を構築することができます。しかし芸能者のように生産に関与せず、移動するものであったとしたらどうでしょう。地域住民として登録することもできませんし、生産品を搾取することもできません。それゆえにひとつのイデオロギーとして、権力の側は芸能者を差別する言説を喧伝し、それを受容した一般の人々も芸能者を差別することになる、というわけです。