江戸時代、伊勢参詣は旅行としてブームになったと聞いていますが、ハンセン病者は伊勢には行ったのでしょうか?なぜ神社、寺ではなくてお遍路を選んだのでしょうか?

伊勢神宮は、穢れを排除することによって神聖性を保つ伝統的神社の最たるものですから、基本的にハンセン病者は排除していたと思われます(奈良時代の一時期の神仏習合状態を除き、その神域からは、原則として仏教や僧侶も排除していました)。一遍の伝記『遊行上人縁起絵』にある時宗2世他阿の正安3年(1301)の参宮記事では、他阿が参拝に赴いた際に、念仏衆に従ってきた癩病者たちは禊をなす五十鈴川の河辺に留め置いたとの記述が出てきます。ハンセン病救済の喧伝をしていた熊野など、一部の神社以外は、ハンセン病の参拝は拒絶されていたと考えられます。