言語論的転回の歴史学批判に対して、さまざまな学者からの回答・反論を紹介して下さいましたが、それらのうち、一般の歴史学者から最も支持されている有力な見解はどれなのでしょう。

授業でも扱いましたが、一般的には、a)歴史叙述は物語りであるが単なる虚構ではないこと、b)歴史学には反証可能性があり学問としての体裁を持つこと、などが定説的〈反論〉でしょう。しかしこれらは、結局、言語論的転回が問題にした「言語の世界構成機能」と、それを前にした場合の歴史叙述の意義、歴史研究の正当性に関する回答とはなっていません。近年、一部の日本の歴史研究者が、あらためて言語論的転回以降の歴史学のあり方を問う議論を展開していますので、まだまだ議論は終わっていないと考えるべきでしょう。