集団が国家となってゆく流れは、移住する民族でもあるのではないでしょうか。そうした場合、国家化に抵抗する手段としての移動は、どのように位置づけられるのでしょうか?

ウィグル、モンゴルなど遊牧民が国家化する場合(遊牧国家)も、やはり移動から定住へというベクトルが働きます。中心となる支配者があり、その支配が及ぶ領域が確定しており、その支配を領域の人民に及ぼす統治機構を持つのが国家ですが、その規模が大きくなればなるほど、支配に複雑な仕組みと多くの人員を要するようになります。その機構が常に移動していては支配が貫徹できませんし、連絡が不充分になってしまう、また小集団間の利害を調整するために記録が必要になれば、それは移動を困難にするほど厖大になってゆきます。よって国家化が進行してくると、どこかに拠点が生まれ、それを中心にして定住化が進行してゆかざるをえなくなるのです。遊牧国家の多くは、この定住化との齟齬に苦しみ瓦解してゆくことになります。