鳥語を解することが専門化し、体系的に教授されるなどのことはなかったのでしょうか。また、鳥語と人間の言葉を逐語的に対照させるような書物は存在しなかったのでしょうか。

授業でお話ししたように、いわゆる鳥情占に属するような書物は、正史に付属する目録類に幾つか確認できます。しかし、そのほとんどが長い歴史のなかで散佚してしまって、実体がつかめないのです。授業で取り上げた実例は、そうしたなかで何とか探し当てたもので、論文のなかには、「実例はまったく残っていない」と断言しているものもあるほどです。よって、「不明」としかいいようがないのですが、ナシ族の『以烏鴉叫声占卜』は、「この時刻にこの方角で烏が鳴いたら、それは○○という意味だ」という形式なので、一応は烏の言葉を解釈しているニュアンスなのです。逐語訳とは異なりますが、それに近いベクトルを持つものかと。よって、もっと烏の鳴き声に細かく注目した卜占書も、存在していたのではないかと思います。