2017-12-01から1日間の記事一覧

先生は、厖大なテクスト群から、このような特定の史料をどのように発見するのですか?

とにかく、調べ始めたら関連するあらゆるものに手を出してゆくことですね。データベースも駆使しますし、文献を1頁ずつ丹念に捲ってゆくこともします。20年以上も研究をしていると、どのようなカテゴリーの文献にどのような記事が存在するか、不思議とだん…

陰陽師は、けっきょく日本のオリジナルではない、と証明されたのでしょうか。

実は、授業で扱った敦煌文書(S.4400「太平興国九年二月廿一日帰義軍節度使曹延禄醮奠文」)が、未だ日本の陰陽道研究ではしっかりと位置づけられていないのです。日本の陰陽師が用いた知識・技術が、漢籍をもとに日本で発展したものであることは確かなので…

鳥を用いた占いは、講義で扱っていないヨーロッパなどの地域にも存在するのだろうか。存在するとすれば、その地域差はどのような要因によって生じるのだろうか。

古代ローマでは、鶏を用いた鳥占いが、要所要所で行われたようです。政治家としても文筆家としても名高いキケロの「占いについて」には、「ローマ人は、どれほど多くの種類の卜占の方法を受け入れて来ただろうか。まず最初に、この国の父祖ロムルスは、鳥占…

占文の内容にある「戦争の有無」とは、他国などから攻撃されることでしょうか。人為的な事柄まで占いの結果として予想されるのは、違和感があります。

まず、個人レベルで使用しうる卜占に出てくる「戦争」は、やはり災害としての戦争なのです。自分にはまったく関わりのないところで発生した戦争が、自分の生活領域を侵蝕してくる。それをいかに事前に知るか、という問題になっています。しかし、『開元占経…

野鳥が人間の家宅のなかに入り込んでくることを凶兆と捉えるような文化では、鳥を愛玩用に飼育したりすることはなかったのでしょうか。あったとすれば、それはどのような意識でなされたのでしょうか。

鳥の飼育の例はあります。野鳥が室内に…という占文は、「野」鳥であることが重要なんですね。つまり、野生/文化を峻別する儒教的認識において、その境界を超えて野生が文化に侵蝕してくる、ということが問題なのだろう、それゆえに「怪異」となるのだろうと…

鳥語を解することが専門化し、体系的に教授されるなどのことはなかったのでしょうか。また、鳥語と人間の言葉を逐語的に対照させるような書物は存在しなかったのでしょうか。

授業でお話ししたように、いわゆる鳥情占に属するような書物は、正史に付属する目録類に幾つか確認できます。しかし、そのほとんどが長い歴史のなかで散佚してしまって、実体がつかめないのです。授業で取り上げた実例は、そうしたなかで何とか探し当てたも…

鳥を介して天の声を受け取るのならば、その逆、鳥を介して人の意志を天に届けることはなかったのでしょうか。

ありそうですね。個々人の呪術的実践ならば、いま思いつかないのですが、ありえたことだろうと思います。例えば東アジアから東南アジアにかけて分布する穀物起源神話には、鳥が天のクラから穀物を盗み出し、人間に与えるという形式のものがあります。鳥は地…

日蝕が起きると、天の譴責として政治の改革が行われてしまうため、予防線を張るために天文学が発達したと聞いたことがあります。鳥占の場合には、そうしたことはなかったのでしょうか。

祥瑞や怪異に関するものは多少はありますが、王権の基盤を揺るがすほどのインパクトを持ったものはありませんでした。日蝕や月蝕のように、計算して声や動きを予測できるものではない、ということもありますね。

上下関係をはっきりと峻別する儒教に対して、鳥の声を聴こうとする鳥情占などは、中国思想にどのような影響を与えたのでしょうか。

儒教や東洋史のみでしか中国の歴史・文化に触れることができない一般の日本人にとって、中国は漢文化中心の国にみえますが、必ずしもそうではありません。現在の中国が、広汎な地域のそれぞれによって異なる言語・文化・心性を持ち、また階層によっても感じ…