今回の講義を通して、高度経済成長というものが環境史的にはどのような位置づけになるのか、よく分からなくなってしまいました。山々に緑を戻した一方で、公害などの汚染もあったため。

非常に複雑な時代ですが、自然環境的にも、「地方農村が中央都市の食い物に位置づけられた時代」といえるかもしれません。都市への若年労働者の流入、人口の集中、第一次産業の衰退は、農業の衰退と農村の過疎化をもたらし、結果として里山の自然の回復を生じて、次第に野生動物の増加ももたらします。一部山林地域には、戦資供出ではげ山化していたところへ杉の植林が進みますが、周囲の環境との調和を考慮しなかったために、日本の材木が海外の材木との競争に敗れ手入れが行われなくなると、一気に荒廃し、現在は土砂災害などを繰り返しながら、周辺環境に適合的な林相へと遷移が進んでいる最中と捉えられます。そうして、バブル崩壊後の里山「幻想」、関連しての共生ブーム、自然保護ブーム。都市の思潮の変転によって、フィジカルな面でもメンタル/スピリチュアルな面でも、地方の自然環境は常に「消費」対象に置かれてきたといえるでしょう。