土器などに表現されている動物種の「確定」は、どの程度正確なものなのだろうか。乳首は男性にもあるのだから、伊勢堂岱の三角土偶など男性と考えてもいいのではないか(逆三角形の体型だし)? / 土偶に男性像はあったのでしょうか?

土偶は授業で紹介した表にあるように、時代・地域によって多種多様な様相を示します。しかし、現在みつかっている土偶を精査しその特徴を調べてみると、乳房・臀部・生殖器の強調された造型から、ほぼ女性を表現していると同定できるのです。他の遺跡や遺物、狩猟採集社会の経済・心性のあり方、弥生時代の人物造型などと比較検討してゆきますと、縄文時代の人物造型は性を直接的に示す身体部位への拘りを強く持っていることが明瞭なのです。ゆえに、伊勢堂岱の三角土偶の胸の突起も乳首ではなく、乳房と解釈されています。弥生時代になると、そうした身体部位よりも、身体全体の相対的特徴から性差を表現する方向へ変わってゆき、女性は男性よりも小さめに、顔なども丸みを帯びた形態を取るようになってゆきます。伊勢堂岱の時点では、逆三角形の体型は男性の表現とはみなされないのです。なお、土偶のうち性差の区別がつかないものは存在しますが、明確に男性像だと判明するものはみつかっていません。