死後の世界と関わりのある月が、漢詩の世界などで望郷を象徴するようになってゆくのはなぜだろうか。

面白い質問です。月は、死者の世界のものであるとともに、やはり再生の象徴です。ヒキガエルも兔も、それを明示しています。インドでも、死者は一定期間月に止まって、再び再生するとみなされた。日本でも、極楽浄土は月にあると、感覚的には捉えられていたようです。いわば、月は諸生命の原郷なのだということができるでしょう。一方で、「望郷」の「望」は、満月のこと。満月をみながら故郷を思うことが、「望」の字に込められていったのかもしれません。