横穴式石室に追葬されてゆくのは同族の人間と思いますが、それは、一般庶民も含まれているのですか?
これも授業でお話ししていることですが、古墳はあくまで首長墓です。古墳時代の一般庶民の墓については、遺構も少なく、よく分かっていません。縄文時代とあまり変わらない土坑墓か、あるいは遺棄葬の形で処理されていたと考えられています。直径2〜3メートルの不整形土坑700基ほどを持つ古墳前〜中期の大阪府長曽根遺跡、長辺1.2メートルほどの方形土坑約1500基を持つ古墳中期の奈良県池田遺跡などは、古墳時代の一般墓地と推測される希な遺構です。集落とは区切られた場所に土坑が掘られ、遺体の収められたことが知られますが、これらはむしろ丁重な葬法であって、遺体を決められた場所へ遺棄する、あるいは放置する遺棄葬の慣習のほうが一般的であったのではないか。遺構自体が少ないのもそのためではないか、と推測されているわけです。