九州の棺のない古墳は、なぜそのような構造をしているのでしょうか?

これも、なぜ、という問いに対する回答は、なかなかしづらい情況です。こうした構造の石室を中心的に研究してきた和田省吾さんは、遺体を載せる台を屍床と名付け、これを持つ北部九州型の石室を「開かれた棺」、木棺や石棺を持ち遺体を密閉する形式の畿内型の石室を「閉じられた棺」と呼んでいます。屍床を持つ北部九州型の石室は、やがて天井がドーム状に整備されてゆき、全体が死者の住居のように構築されてゆきます。もともとは、やはり地下墓室を死者の住居とする中国、朝鮮の形式に由来するものと考えられます。すると遺体が棺に入っていないのは、石室が死者の生活空間であるためで、そもそも遺体を納める密閉された函自体がナンセンスなのだ、ということなのでしょう。