現在、蘇我や大伴、阿倍、中臣といった苗字の人が存在しますが、安直に飛鳥時代の豪族の子孫だと考えてよいのでしょうか?

列島に生きる人びとの苗字は、その後変転を繰り返します。古代においても、Aという氏姓を名乗っていた集団が突如Bという氏姓を名乗り始める混乱があり、そのつど朝廷がこれを正す系譜や帳簿などを作成しています。実は、序文に従うなら『古事記』もその一種で、壬申の乱に伴う中央豪族の没落、地方豪族の台頭のなかで、さまざまに生じた氏族・系譜の混乱を正すことを一目的としていたのです。同じようなことは、中世にも、近世にも、そして一般庶民が苗字を許された近代にもありました。そのそれぞれにおいて、系譜や伝承は多様に捏造されています。よって、王族や公家の系譜でもない限り、古代にまで遡れる素性の人は少ないと思われます。