伝記と史料とは、かなり食い違う部分があるのでしょうか。 / 文献史料はどこまで信用しうるのだろうか。

もちろん、伝記も重要な史料です。問題は、個々の文書の性格ということで、「伝記」といったカテゴリー一般に不正確な属性があるわけではありません。ただし、その人物に対して豊富な記述をしてゆくなかでソースの不透明なエピソードが大量に用いられていたり、その人物の言動を正当化しようとする傾向(マイナスの面は描かず、プラスの面を強調する)が強くあります。そうしたバイアスに注意して、史料批判をしてゆかねばなりません。歴史学者は原則として、「史料は嘘をつく」というスタンスで文書に相対しています。