仏も神も、人が信仰するものという点で同様な存在なのに、神仏習合という考え方が生まれる前は、なぜ別のものと考えられていたのですか?

もともと「仏」は目覚めた人を意味していましたが、大乗仏教化のなかで神格化が進んでゆきます。しかし、人間が修行を重ねて「なる」存在であることに注意が必要です。一方の神祇信仰の「神」は、やはり自然を直接的に表象するものであり、人間が「なる」ものではありませんでした。前者は宗教としての教え、世界観・人間観、救済の方法などが明確に示されており、それを伝える経典、護持・布教する僧侶、その集まりである教団が存在しましたが、後者は原則として地域共同体を基盤としており、統一的な教えはなく、経典や教団も存在していませんでした。「仏」「神」の意味するものも、その社会的意味付けも、まったく違うものだったのです。ただし、仏教の教理体系が理解されていなかった頃は、これを「外国の神」と捉える認識(蕃神観)は存在しました。