日本史をずっと学んできて疑問に感じていることとして、日本人にはやたらと異質な存在、とくにアジア人などを下にみる習慣が歴史的に垣間見えるが、これは他のアジア人も同じなのだろうか。

歴史的にみれば、自らを政治・文化の中心とみなし周囲を蛮族と捉えるエスノセントリズムは、まずは中国王朝において強烈にみられます。倭=日本も当初はその差別的視線にさらされますが、古代国家形成時、それ自体を自らのものとして小中華的な世界観を築いてゆくことになります。中世には、仏教的に「極東の日本こそがブッダによる真の布教の対象」とする優越意識、それらと交渉しつつ形成されてゆく神国思想などが生まれ、後者は近世の国学によってさらに加速して、自己卓越化の度合いを強めてゆきます。一般社会では、必ずしもかかる支配者側の自意識を共有してはいなかったでしょうが、「八紘一宇」に収斂する近代教育の一「成果」ということかもしれません。なお、朝鮮も強固な中華思想を持っていたことは確かで、近世朝鮮王朝などは、「中華が蛮族の征服王朝となった今、夏・殷・周の正統を受け継ぐのは、殷の王族箕子に起源する朝鮮のみ」と考えていました。徳川政権への朝鮮使節派遣については、「武の国である日本を文の国に教化することによって、再度の武力侵略を防ぐ」といった意見も出ていたほどです。エスノセントリズムとまったく無縁な国、民族は、希なのかもしれません。