2008-01-09から1日間の記事一覧

『史記』に基づいた太秦のデザインですが、これほどうまくはまるとかえって「本当かな」と疑問に思います。その危険性といいますか、関連づけて考えるに際して注意すべきことなどがありますか。

やはり実証性でしょうね。講義で扱った太秦の具体例は、すべて実証できるものです。というのは、『史記』等々の漢籍と太秦とを結びつける記事の大半が、秦氏から派生する惟宗氏の著作物を典拠とするからです。現在残っている「秦氏本系帳」の逸文も、すべて…

オリンピックなどで優勝者に月桂冠が贈られるのも、死と再生のイメージに結びついているのでしょうか。

死と再生の月桂は中国に固有のものです。オリンピックの月桂冠は、ギリシア神話で光明神アポロンの聖樹となった女神ダプネーが、アポロンの頭上に葉を降らせたことに由来します。ただし、ダプネーは川の神の娘ですので、明確には言い表せないものの、東アジ…

「大きな楠がお稲荷さんの使者のキツネの住処になっていたため、それを削ろうとした人の家が火事になった」という伝承は、単なるキツネへの信仰でしょうか。それとも伐採抵抗に関連しているのですか?

樹木の宗教的な力の源は様々に表象され、神祇や木霊そのもののほか、蛇や狐、あるいは妖怪のような存在が宿り主として描かれることがよくあります。木霊そのものではありませんが、樹木の力を分かりやすい形で表そうとした結果なので、伐採抵抗伝承として同…

史料11に「伐採を担った囚人」とありますが、なぜ彼らが担わなければならないのですか。伐採はそれほどリスクがあるのでしょうか。

これは徒刑でしょうね。律に基づく刑罰のひとつで、現在の懲役に当たります。賃金を必要としないので、都城の修営や清掃に便利に使われたのです。

樹木を伐ると洪水が起きるという経験則を中心とした物語はあるのでしょうか。

近代には分かりやすい事例が幾つもあります。私の作成した『環境と心性の文化史』の伐採抵抗伝承集成にもかなりの事例を集めましたが、笹本正治さんの『蛇抜・異人・木霊―歴史災害と伝承―』が、この問題に関する重要な著作です。「蛇抜」とは、鉄砲水を大蛇…

木の神が水を使って洪水を発生させるのは、アジア特有の伝承なのでしょうか。/樹木伐採と川や水害が関係しているのを、古代人が感覚的に理解していたことが印象に残りました。東アジアだけでなく、他国にもありうることなのでしょうか。

論理的にはヨーロッパ等にあってもおかしくありませんが、寡聞にして知りません。4世紀頃の聖人伝など、『日本書紀』の伐採説話とよく似た内容のものが出てきますので、今後気を付けて調べておきたいと思います。

西洋には本当の意味での異類婚姻譚がない、という話が印象的でした。それはやはり、精神性の違いというか、自然に対する考え方の違いや宗教観の違いが原因の一つなのでしょうか。

少し誤解を招くような言い方をしてしまいましたね。西洋には異類婚姻譚がまったくないということではなく、人口に膾炙する典型的なパターンに、魔法にかけられ異類に変わってしまった貴人を救済する系統のものが多い、ということです。いかなる内容の物語が…