2012-06-22から1日間の記事一覧

日本のマスコミには報道内容に偏りがあるという話でしたが、先生はふだんどれくらいの新聞を、また国内・国外メディアを比較しているのですか?

そういわれるとつらいですね。かつて、「寺で暮らしていた」ときは、左から右まで、『赤旗』『朝日新聞』『毎日新聞』『神奈川新聞』『読売新聞』『産経新聞』を総覧していました。現在は、通常は限られたソースでしか情報を得られていません。しかし特定の…

教育実習に行ってきましたが、私の担当した中学3年生の生徒は、太平洋戦争という戦争があったことを知らない者が29人中9人、日本がアメリカに占領されたことを知らない者が29人中15人いました。この講義で学んだようなことを雑談程度に話したら、指導教員から、「知識の詰め込みだ」といわれました。その先生には、「大学の勉強は知識の詰め込みで、知識だけあってもどうしようもない」と終始貶されていました。私は、知識とは何か分からなくなりました。

いろいろな意味で残念な話ですね。知りもしない人を無碍に批判するのは、「他者表象の倫理」上問題があるでしょうが、それでも上に書かれたことのみから判断すると、その指導教員の方は大学という研究教育機関の意義を根本的に取り違えています。大学は学生…

私は、尖閣諸島の問題について卒業論文を書こうと思っています。しかしあまりに時代に直結したことがらなので、中国・日本両国民の感情を傷つけてしまうのではと悩んでいました。しかし今日、「中立性確保の方法」について学び、ようやく方向性を見出せた気がします。どちらかの立場に立つのではなく、両者を対立させない視点で、公共利益を見出すべく研究したいと思います。

素晴らしいですね。歴史的な経緯をきちんと追いながら、お互いの主張を検証し、そのうえで協同的な関係をいかに見出すかを考えてみてください。

これまでの講義を聞く限り、歴史学は倫理に基づいて展開している印象を受けます。後世代が守るべき教訓と取るべき責任を伝える役割がある、と思えるのです。しかしそのことによって、良しとされないことが決めつけられ、いじめや差別といった問題がなくならないのではないかとの疑問を持ちました。これは、レポートの現代的課題になるでしょうか。

なります。歴史学の倫理が過去を現在に従属させることになるかどうか、その点も踏まえてしっかり考えてください。

前近代の「客観性」には宗教的要素が伴うとのお話でしたが、それらをふるい落とすことで成り立った近代学問は、本当に「客観的」なものなのでしょうか。

当然の疑問ですね。質問の主旨とはちょっと違うかも知れませんが、例えば、現在高度に発達している化学や物理学の知識を、皆さんはどれだけ持っているでしょうか。また、それは皆さん自身が実験によって解明し、きちんと実証した事柄でしょうか。日進月歩で…

前近代の「客観性」には宗教的要素が伴うとのお話でしたが、史官が「中正」を貫くのは、そういった神への恐れでもあったということでしょうか?

やはり中国の史官の場合、「神」というより「天」でしょうね。後に、地上の官制を反映して天にも天帝の官制が想定されるようになると、人格神的要素も介入してきますが、本来は、そうした人間的なもの一切を超越した概念であろうと思います。それに対する意…

『文心雕龍』の史論には「歴史に勧善懲悪を示」「その時代の聖人を規準にして歴史を記述する」とありましたが、後の時代においてその聖人の評価が変わる可能性についてはどう考えていたのでしょう。

「聖人に従う」というのは、個々の時代の誰それというより、古代の聖王たちと周公旦・孔子の言動、それを伝えた記録という意味でしょうね。そして、聖人なるものの評価は絶対であり、時代には左右されないのです。なぜなら、普遍不変の真理を語るのが聖人だ…

中国人の歴史観を表す言葉としての「現在主義」ですが、もし、ある人が先祖から伝えられた歴史を次の代に伝えられないまま亡くなったならば、この歴史は消えてしまいますが、それはもはや「事実」ではなくなってしまうのですか?

そうですね、それゆえに中国では、家を継げずに死んでしまう夭折者を最大の不孝者としたのです。彼らは非業の死者であるわけですが、孝の概念から一族の宗廟では祭祀を受けられませんでした。ゆえに(観念的世界においては)悪霊となるしかなく、修祓など種…