平田派、津和野派、薩摩派は、それぞれどのような考え方に基づいて最高神を決めているのでしょうか。

平田派は、これまでも述べてきたように幽冥界の議論に基づいています。天皇が支配する現実世界に対して、使者の赴く神霊の世界=幽冥界はオホクニヌシが統治する。それは、オホクニヌシが国つ神の代表として大地の正統な支配者であり、また冥府の統括者スサノヲの後継者でもあるからという議論です。津和野派も薩摩派も実は平田国学の弟子筋に当たるのですが、前者はオホクニヌシの幽冥界支配を認めつつ、しかしそれは地球に限ったことで、神霊世界全体の至尊神はアマテラスであり、またその光の前では幽冥のすべてが顕に現されてしまうと考えます。後者は篤胤が詳しく扱わなかった造化の問題に注目し、やはりオホクニヌシの幽冥界支配を認めながら、その力や領域を大幅に縮小します。天は造化の力によって統べられ、生命はその力で地上に人間の身体を得て、死ねば幽冥界を経過して最終的に天へ戻る。ゆえにオホクニヌシの幽冥界は一通過点に過ぎず、天を統括する造化三神こそが最高神であるという論理になります。