2014-10-22から1日間の記事一覧

現代は多数の宗教が存在しています。それらが平和的に共存するには何が必要と思いますか?

宗教とは、まず第一に己がいかに救済されるかによって選択され、その救済を通じて社会へ貢献しようとするものでなくてはなりません。後者は救済された自己による報恩の貢献であって、自己の主張の押しつけであってはならない。自分自身がそうであったように…

最近になって、ネトウヨに代表されるような社会の右傾化、都合の良い歴史解釈が目立ちますが、その要因は何だとお考えですか?歴史学者として、第二次世界大戦前と似たものを感じませんか?

歴史学者としては、「歴史は繰り返す」とは考えません。歴史は過去そのものとは異なりますし、第二次世界大戦以前と現在の世界情勢にも大きな相違があるからです。ただし、国家が国民に対して及ぼす権力を強化しようとしていることや、しかしその方法が極め…

明治政府が祭政一致を目指したとき、また神道事務局神殿論争の展開と終息に際して、一般民衆からの反発などはなかったのでしょうか(広い支持層を持っていた出雲派は、そう簡単に衰退してしまったのだろうか?)。国民は神道に大きな関心を寄せていたのでしょうか? / 出雲派や平田派の争いが、戦争にまで発展しなかったのはなぜでしょうか。

もちろん、社会は大混乱に陥っていました。自由民権運動の展開と国会開設へ至る時代的流れと、この祭神論争の終結までの経過がほぼ時期的に重なっているのは、両者が無関係ではなかったことを意味しています。しかし、議論の中心にあった千家尊福は、大日本…

『日本書紀』のほんの一部にしか書かれていない神話を無理矢理正当なものとしたせいで、日本人が本当の神話を忘れてしまい、宗教にあまり関心を示さなくなったのでしょうか。

まず、「本当の神話」などあるのか、ということを考えておかねばなりません。2回目くらいにもお話ししましたが、『古事記』や『日本書紀』自体、内廷や国家の目的のために政治的に編纂した書物であって、古代社会にはより多様な神話世界が、それぞれの地域…

天皇家にとって、アマテラス以外の神はどうでもよい存在なのでしょうか。

天皇家は神道の最高司祭ですから、天皇家にとって、アマテラス以外の神がどうでもよいわけではありません。あくまで祖先神であることから、丁重に奉祀しているだけです。ただし、例えば古代においては、伊勢神宮とその他の神社の格差は歴然としていました。…

顕幽論の生まれた背景や理由を具体的に教えてください。

アニミズムに近い形態に留まり体系化された思想・世界観・教義などを持たなかった神祇信仰は、中世以降、仏教や儒教の影響を受け、その教説や枠組みを借りながら次第に宗教としての体裁を整えてゆく。これが、「神道」と呼ばれるものです。仏教が釈迦の教え…

平田派、津和野派、薩摩派は、それぞれどのような考え方に基づいて最高神を決めているのでしょうか。

平田派は、これまでも述べてきたように幽冥界の議論に基づいています。天皇が支配する現実世界に対して、使者の赴く神霊の世界=幽冥界はオホクニヌシが統治する。それは、オホクニヌシが国つ神の代表として大地の正統な支配者であり、また冥府の統括者スサ…

神道というひとつの宗教のなかにも幾つかの派があり、重んじる神々が違うことから、「神道」にまとめてしまってもよいのかという疑問が生じました。キリスト教のプロテスタントやカトリックの問題と似ていますか?

日本の現代人にとってもっと身近なのは、やはり仏教の形態でしょう。仏教も、ゴーダマ・シッダルダの説いた教えを基盤にしつつ、本当にたくさんの宗派へ枝分かれしてゆきます。分派のもとになっているのは、どの経典を自らが救済される方法と採るかであって…

平田派や出雲派は、アマテラスや造化三神を「認めない」わけではない、しかしそこにオホクニヌシも加えてほしいという主張だったのでしょうか。 / 神道は多神教といわれますが、最高神を定めたがる点と矛盾するように思われます。

平田国学の主張は、とにかく幽冥界の問題と密接に結びついています。造化三神は世界を生成するエネルギーであり、アマテラスは高天の原を統括する存在だけれども、地上と密接に関わる幽冥界の支配者はオホクニヌシである。大地のうえに生きる人間は、まずこ…

『古事記』や『日本書紀』のなかに、アマテラスの性別を示す記述はあるのでしょうか。 / なぜアマテラスには、オホヒルメムチという別名があるのですか。

『古事記』にははっきり女神であることを明記してはいませんが、スサノヲが高天の原に上ってきたのを男装の軍人の姿で迎える(すなわち男装をする前は女性の姿であった)など、女性であることを類推させる場面はあります。『日本書紀』には、オホヒルメムチ…

オホクニヌシが地上の支配者となるまでのエピソードは、どのように創られたのですか。

『古事記』には、オホクニヌシにまつわる一大叙事詩が収録されていますが、彼が幾つもの名前をもって記されているエピソード群は、もともと異なる神々の物語であったものを、ひとつに統合したのではないかと考えられています。また、核となるオホナムヂ→オホ…

『古事記』に登場する神や人は、どこから実在するものなのでしょうか?

神々の言動に何らかに歴史的事実が反映されている可能性はありますが、それらはあくまで神話であって、実際にあったこととは考えられていません。多くは王族や氏族の来歴、他に比した優越性を喧伝する始祖伝承であったり、物事の起源を説明するために創られ…

『古事記』において、オホクニヌシがアマテラスに国を譲ったという部分は、他民族による侵略としか思えません。我々日本人は、侵略を行った側の子孫ということになるのでしょうか。

歴史上、日本列島が外来民族によって占領・支配されるに至ったことは、第二次世界大戦の敗戦によるアメリカ軍の占領しか確認されていません。そもそも日本列島に暮らす人々自体、長い年月をかけて南方や北方から流入してきた人々の、交渉・融合によって成り…