2008-04-25から1日間の記事一覧

赤が逆に縁起の悪い色とされることもあると思います。私は字で書くときに赤で書くのはよくないといわれたことがあるのですが、これはやはり他界と密接に関わるため、プラス/マイナスの両義性を持つということでしょうか。

上にも書きましたが、そのとおりですね。赤い字で書くといけないというのは、直接的には墓碑の風習に由来するのでしょう。墓碑には存命者の名は朱を入れて書かれ、亡くなると白字に落とされますが、赤字の名には「いずれ亡くなる人」という印象が強いのだと…

赤という色に生命や再生のイメージがあるとのことですが、古代人の感覚と現代人の感覚は異なるのではないでしょうか。

とうぜんそうなのですが、生命エネルギーの象徴とみる思想は古代にむしろ強いのです。狩猟採集社会では、現在でも獲物の血を貴重なものとして扱いますし、各宗教ではそれゆえにタブー視する規制も多く存在します。日本の「血の穢れ」もそうでしょうが、『風…

ベンガラはインドのベンガル地方に由来するとのことですが、インドの女性が額に付けている赤い印も、神と関わりのあるものなのでしょうか。

専門外ですが、髪の分け目に付けるのはシンドゥールといって既婚者の証、額の飾りはビンディーといってヒンズーのシンボル、シヴァの第三の目に由来するようです。人間の額に覚醒の印が生じるのはヒンズー以前からの思想で、仏教でも悟りを開いた者の証であ…

『述異記』逸文の羅根生の話について。神の遊び場があったとするなら、その付近で生活することは許されていたのですか。

史料に「この村の傍ら」とあるように、根生が耕作した土地は、ちょうど神の領域/人の領域の境界に位置していたものと思われます。予め祭壇が立っていたように、そこは村人たちが神に供物を捧げるべき場所で、耕作などしてはいけなかったのですね。当然、村…

テレビ番組を観ていると、スピリチュアル・カウンセリングやその他の占いで祖先が分かるといったことをやっていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。

根拠はありません。メディアや商業ベースに乗るようなものは、大部分は虚偽ですので信じてはいけません。だいたい、人間の歴史のなかで、どういう系統の誰々までを先祖とみるかという認識は、時代や地域により大きな違いがあります。それを一元化していいあ…

屈葬が悪霊の動きを抑制するという説が教科書に載り、有力な学説のように扱われているのはなぜですか。また、動物霊が悪霊化することはないのでしょうか。

なぜでしょうねえ。今まで、別だん支配的な学説であったというわけではないと思うのですが。これは、教科書編者が採用していた見解だったというしかないでしょう。動物霊の悪霊化については、先にも触れた両義性という意味ではありえます。アニミズム社会に…

死者に対する埋葬は、本当に死者への礼儀として行われたのだろうか。それとも、自分たちに死が舞い降りることを恐れて祈ったのだろうか。 / 死という悲しみを解決するために、その方法をみえない異界・他界の理の中に見出そうという気持ちがあったように思いました。確かにそこにいた人が死ぬことを「去る」として、どこへ行ってしまったのか自然界や自らの体をヒントにしてまで問いかけてゆく。道を聞く子供のように純粋な疑問が、骨の配置や儀礼に表れているように思いました。

まさに宮澤賢治と妹トシの世界ですね。文献のない縄文の人々の心性を知ることは容易ではありませんが、惜別と哀悼の気持ちは間違いなくあったでしょう。呪術や儀礼の発端には、そうした個々の情念、感性が大きく関わっているのだと思います。ただしそれが共…

埋葬体形区分の第七・第八地域において、外部から別の葬法が入ってきたとすると、その起源としては中国や朝鮮半島が考えられますが、それらの国々にも特徴的な葬法があったのですか。 / 屈葬についてですが、二分化地域の「海に開かれていたから」という理由に疑問を持ちました。海と接しているのはどこでも同じではないでしょうか。

北九州とそれに連なる瀬戸内〜畿内、東海という地域は、海流などの関係で海の道が通っていたので、外部からの文化が入りやすく、常に異文化接触を生じ複合的な文化形態(いうなればクレオール)を構築していた地域なのです。よって弥生時代、古墳時代におい…

屈葬が再生を祈願し伸展葬が死の抽象化を示すとしたら、時代の経過とともに生きている人間と遺体との距離は遠くなったのでしょうか。

屈葬と伸展葬、どちらの方がよいということはあるのでしょうか。

何を基準に価値判断するかということで、絶対的な良し悪しはありませんね。ただ、屈葬の方が遺体を損壊する確率は高いので、現代的感覚からいうと〈悪い〉ものということになるでしょう。しかし、火葬が損壊の最も甚だしいものでははあるのですが。

動物の種類によって、神聖視されたり災いをもたらすとされたりしたのでしょうか。また、イルカは食用とされたのですか。

文献が残ってくるとはっきりするのですが、縄文時代においては分からないことが多いですね。しかし、一般に神的存在は、力の強いものほどプラスの恩恵/マイナスの災難とも大きいものです。日本の古代においては、神もよく祭れば幸いをもたらし、侮れば災い…