2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

国風文化は貴族を中心とする文化だと思いますが、民衆の間から生まれて貴族に伝わっていった文化などはあるのでしょうか。

例えば『蜻蛉日記』『源氏物語』などのなかに、中央貴族たちの宇治における別荘で、周囲の山川で生活する「山がつ」と呼ばれる人々が、別荘に奉仕して周辺の産物を届けたり、自然物や生業に関する情報を提供したりするシーンがみられます。また、中世後期の…

国風文化に限らず、自国の歴史を美しくみせようとするのは、日本だけなのでしょうか。日本人の、そのような見栄を張る性格が原因でしょうか。

日本だけ、ということはありません。例えば中国では、古代から連綿と中華思想が機能しています。これは、中国王朝の持つ文化こそが世界の中心に位置する重要なもので、文化を持たない周辺の蛮族へも普及させ、これを訓育してゆかなければならないとの考え方…

浄土教が唱えた「来世の極楽往生」を実現するためには、どんな具体的な方法があるのでしょうか?

例えば王朝文化全盛期の平安貴族たちが信じていたのは、世俗的な栄達が往生の形式にも直結するという発想です。すなわち、生前絢爛たる寺院建築を建造したり、寺院や僧侶に寄進し仏教の保護に努めた人間は、死後もよりよい形での成仏ができる。例えば、良源…

「独自」という言葉は、いったい何を意味するのでしょう。

これも、その意味をハッキリ定義して用いないと誤解を招きますね。皆さんのコメントにあったように、中国や朝鮮の影響を受けていないという意味なら、国風文化を列島「独自」の文化とするのは間違いです。しかし、それらと交渉しつつオリジナルとは異なる形…

「国風文化」の成立は、律令国家体制の内的な変質に帰因するのでしょうか?

王朝国家体制と軌を一にしているとはいわれています。すなわち、ちょうど菅原道真による寛平の改革以降、例えば税制についても、これまで人民に課していた税を土地に課すという大転換をなし、種々の制度が大きく変革されてゆきます。その結果として王権や有…

教科書の記述の仕方について、例えば一方向からの断言や決めつけはおかしいというようなことを、学界から文科省に申し入れたりはしないのでしょうか。 / 先生は、この国風文化論に対する誤解を是正するために、どうしたらよいとお考えですか?

内閣府の特別機関として日本学術会議があり、その第一部が人文科学で、科学の発達と社会への還元の問題について議論を重ね、内閣府へ答申を出すことも行っています。日本史の関連でいえば、これまで中高の歴史教育の思考型への転換、教科書の件についても答…

文化とは、どこまで浸透すれば文化なのでしょうか。

私の専攻する環境文化史の観点からいえば、人間の営みのすべてが文化です。まったく社会に一般化していないような、個人が孤立して持つものも文化です。文化は、個、家族や村落、地域、国家といった大小の集団などによって、それぞれ特徴(ある程度の共通性…

自然環境に対する影響の点でいえば、共生どころか害悪となる人間の活動ですが、異文化コミュニケーション分野の人間としては、相互の生命の保全の道を考えることが必要なのかなと感じました。建設機械メーカーへ就職するので、興味深い問題です。

そうですね。しかし、人間が他の生命の保全の方法を考えてしまうということ自体、すでにコントロールであり支配なのだという自覚が必要です。すなわち、私たちの踏み込んでいる領域は、もう「帝国」からは逃れられず、自分もその一員なのだということ。利益…

ドイツと日本の選民思想を比較すると、日本ではそうした志向を未だに持っている人が多いように思います。「自然(田んぼ)を愛する」ことはもちろん、「四季を味わえる」「旨味が分かる」など、日本人は特別だと思いがちではないでしょうか。他の国家も、多かれ少なかれそういうものなのですか。

社会や文化のあり方、辿ってきた歴史のあり方によって多少の相違はありますが、概ね地球上のあらゆる民族はエスノセントリズム(自民族中心主義)を持っています。それは、自分たちを中心にして世界を把握しようとするからで、自/他のカテゴライズの成立と…

ドメスティケーションでは、オオカミ→イヌの生物的移行も関係がありますか?

「生物種」のカテゴライズ自体が曖昧な点もありますので、オオカミ/イヌの区別は、DNAレベルでどこまで成り立つのか未だ議論もあります。すなわち、かつてあったジャッカルやコヨーテを却け、オオカミがイヌの祖先として確定されて以降は、イヌもオオカミの…