法律の抜け穴で自分の利益だけを増やす原因を作った墾田永年私財法は、格差社会を生み出したが政府の財源は満たす両刃の剣だったということですか?

授業でもお話ししましたが、墾田は輸租田でしたので、私有の密に誘われて土地開発が進んでゆけば、国庫も充分に潤うはずでした。しかし、奈良時代末から社会階層の大規模な変動が起こり、旧来の豪族層が衰退する一方で新興の豪族層が力を蓄え、浮浪逃亡や偽籍も増加し租税賦課の対象が把握できなくなっていったのです。課税対象を人から土地へ転換した王朝国家の国政改革が必要となったのは、墾田永年私財法という法律自体に問題があったのではなく、その法令と社会・経済情況の関係から種々の弊害が発生したためなのです。しかし、開墾の灌漑用水は自ら開発することを義務づけたため、一般の農民には負担が大きく、結果として墾田は、一部有力農民や豪族層のもとへ集積される結果となり、公の耕地を確保するには到らなかったようです。