もちろん熊の出現や生息に関わりのある地域の可能性もありますが、古代から続く地名である場合は、大部分がクマ=隅の意味で、辺境や周縁を意味したと思われます。九州の大隅や熊襲、授業で取り上げた熊野などもその意味でしょう。日常生活空間の周縁部は神霊の領域でもあったので、隅からクマ=神という考え方が展開していったのでしょう。動物の熊の出現も、そうした心性を背景に解釈されたと考えられます。ちなみに紀伊半島以外の熊野地名は、古代に遡るものでない限り、主に近世以降の熊野参詣の流行と熊野神社の勧請によって名付けられたものと思われます。