縄文時代の集落の構成が気になりました。性別分業など、環境の変化によって影響を受けたりしたのでしょうか。

老若男女に大きな偏りはないと思われますが、平均寿命の関係からいえば、やはり現在のような高齢者は少ない集落、社会であったといえるでしょう。性別分業に関しては、基本的に男性が狩猟・漁撈全般、女性が貝なども含めての採集に従事していたとみられています。民族社会の調査によって、衣服や土器の製作なども女性の仕事であったと推測されています。これらは、人類の歴史の大半をなす狩猟採集時代に長く続いた伝統のようで、進化心理学という分野では、その影響が現代人の男女における心理的特徴にも表れているという見解があります。例えば、ある立体を一方向から眺めた図を例題で示し、幾つかある多方向から眺めた立体の図のうち、例題と同じものを選ばせるという「心的回転課題」という心理テストがあります。これは、頭のなかで立体を精確に再現できるかどうか、すなわちどんな方向からみても対象をそれと同定できるかどうかを試すものですが、調査してみると女性より男性の方が圧倒的に成績がよい。これは、さまざまな地形を持つ場所を獲物を求め追跡してゆく狩猟に必要な能力であり、それに優れた遺伝的形質を持つ者が進化論的に子孫を多く残してきた結果であるとみられているのです。同様に、神経衰弱などのゲームを行うと女性の方が成績がよく、これは同一の場所において何がどこにあるのかを記憶しておく、最終作業に必要な能力を強く持つ遺伝子が進化論的に継承されてきた結果だと考えられています。