『神皇正統記』についてですが、北畠親房が天皇を中心に歴史を組み換えたと仰っていましたが、それは紀伝体ということでしょうか。

紀伝体という形式もそうなのですが、さらに重要なのはその内容です。ニニギが、いわゆる天壌無窮の詔勅をアマテラスから得て、それを正当性/正統性の根拠に地上支配を行うという発想は、この書物においてできてきます。『古事記』にはそのことは書かれていませんし、『日本書紀』にも異伝に含まれるだけで、いわゆる本文(正文)には書かれていません。親房は武家に対する天皇家の優越を確証し喧伝するために、このような歴史観の構築を行ったものと思われます。