現在の歴史学の考え方の主流は実証主義的な考え方であると思うのですが、皇国史観とマルクス主義的な見方をするグループが今も存在するのでしょうか。

現在も基本は実証主義ですが、上に述べたように種々の問題点があるため、さまざまに修正されながら用いられています。いまの皆さんからすると驚くべきことかもしれませんが、1980年代までは、人文・社会系の多くの学問ではマルクス主義的な考え方が主流になっており、これに関する知識のないひとは研究者としては認められませんでした。ゆえに現在でも、マルクス主義的な歴史観を、やはり修正しつつ用いている人は存在します。歴史学研究会歴史科学協議会など、歴史学における主要な学会には、マルクス主義的思想傾向の強いものもたくさんあります。それに比べ皇国史観は低調ですが、まったく消えてしまったわけではありません。神道系の大学や学会を中心に、暴力的・強制的な面は是正しつつ、一定程度残存しています。