実証主義の立場に、「無用より有用を重視する」とあったが、歴史における無用なものとは何だろうか。何をもって有用/無用を分けてゆくのか。

これは、実証主義歴史学というより、コントの実証主義の立場ですね。コントのあり方としては、哲学に科学としての価値を与えることが目的です。現代の日本史においても実学(=自然科学や社会科学の一部)重視、虚学(人文科学)批判が叫ばれていますが、そのスタンスと似ています。つまり、哲学のあり方を実学に近づけてゆく、現実の諸問題にまったくの無関係である学問ではなく、アクチュアルに関わり役に立つ学問を目指すということでしょう。有用/無用の判断も何らかのスケールがあるわけではなく、むしろ学者・研究者の社会に向かう立場を論じているものと思います。