「表現の不自由展」が再開されました。そのなかに、東北における東日本大震災の被害を揶揄するような展示がありましたが、先生はそれについてどう思われますか?

Chim↑Pomさんの映像作品ですね。実際に福島において、自分たち自身も被災しながら、救援活動、復興活動に尽力してきた若者たちの言葉なのだ、という点が重要でしょう。つまり彼らは当事者である、ということです。もちろん、当事者であればすべてが許される、というわけではありません。この言葉で傷つく同じ被災地域の人々もあるでしょうし、あるいは広島や長崎、その他世界各地の放射能被害者たちも、心をかき乱されるに違いありません。作品をみると、彼ら自身が自分たちを盛り上げてゆくために、ある意味ではその場の興奮も手伝って、ふだん思っていないような言葉を口にしてしまった、ということは考えられます。その場合、彼ら自身が自分たちで考え、謝罪をしてゆく必要があると思います。Chim↑Pomさん自身にも、彼らが口にした言葉の問題性を認識していたとすれば、公開前にそれについて話し合うこともできたはずで、一定の責任は生じます。例えばその後の議論も含めて「作品」として展示すれば、より深く、誤解もあまり生まれない状態で、問題を提起することができたのではないでしょうか。それではインパクトが…という話になるかもしれませんが、抑圧される人々への配慮よりもインパクトが重視されたなら、それこそ問題は大きいように思います。しかしいずれにしろ、このように意見交換の場を作る役割については、彼の作品もそれなりの効果を果たしたのだ、とはいえますね。