ゴジラが国会議事堂を壊したときに拍手が起こったと仰っていましたが、戦争が終わった1945年から10年ほどで、国民の考え方が尊皇から正反対に変わってしまったのでしょうか。
国会議事堂は、あくまで戦争を遂行した政府の象徴であって、天皇を象徴していたわけではありません。日本国民の多くは政府に対して憎悪を抱いていても、天皇に対しては別の見方をしていたと思います。それは、戦後昭和天皇が列島各地を旅して回った際、人びとが歓呼して迎えたことにも表れています。戦争直後、東京の焼け野原を歩きながら、日本の体制が一新されることを夢見ていた作家の堀田善衛は、焼け跡に望む昭和天皇に対し人びとが平伏して「詫びる」姿をみて、日本は永久に変わらない、絶望したと書いています。大部分の日本国民は、「悪いのは天皇ではない」と考えていたのでしょう。それだけ、近代の皇民教育が深く浸透していたのだ、と考えることができます。