「亀」について。日本では海亀などが周期的に産卵に来ていたり流れ着いたりするので、神聖視されてゆくのは分かるのですが、中国ではなぜそうなったのでしょうか。

そもそもの神聖化の理由としては、1)牛や羊の肩胛骨と比べて多くの平面を確保できるため、2)食亀の習俗との関係、3)亀の希少性・宝物性、4)亀の霊験性・呪術性(亀霊崇拝)などが指摘されていますが、現在最も注目を集めているのは4)です。近年、黄河下流域〜揚子江流域における大〓(水+文)口文化早期以降の大型・中型墓より、亀の腹甲・背甲を綴り合わせて嚢状にした器物が、多く小石や骨針・骨錐を内包した状態で出土、学界の話題を集めています。古く約7000年前の河南省舞陽県賈湖村344墓では、小石の詰まった8個の亀甲器が確認されており、約4500年前の安徽省含山凌家灘遺跡からは、洛書(魔法陣)のような図形を持つ玉板を挟んだ玉亀が発掘されています。このような亀甲製器物は、その後、多くの墓跡から出土するようになりました。中国の兪偉超氏はとくに凌家灘玉亀に注目、全体を振り揺らして小石を動かし、図形との位置関係から吉凶を占う道具だったのではないかと推測しています。亀の神聖性は、上記の1)〜4)が様々に関連しあうなか、かなり早くに成立したと考えられますが、そもそもはその特異な形と、水との関わりに起因しているのでしょう。