ひとつの神話を下敷きに、地域ごとに少しずつ話が違うということもあるのでしょうか。大体の筋書きは同じでも、力点の置かれるポイントが異なったりすることはあるのですか。

それは当然あるでしょう。各地の神話や伝承、昔話などには「類話(ヴァリアント)」というものが存在しますが、これはまさに、類似の話で各要素の力点が異なるものなのです。物語として読むと「同じようなもの」になってしまうのですが、その地域で一体何を託されて語られていたのか、いかなる社会的機能を果たしていたのかなどを考えるとき、非常に重要な資料になります。とくに隣接する民族間に類話が機能しているような場合は、その相違が民族的特徴を意味することもありますので、より注意して読む必要がありますね。