ヨーロッパで熊の絶滅が多くみられることは、その地での熊に対する信仰と関係があるのでしょうか? / 現在のヨーロッパでは、何か熊に関する祭礼は存在するのでしょうか?

まったく関係がないということはできないでしょう。動物の主神話のある形式が、際限のない狩猟が対象となる動物の絶滅を将来することのないように作成されていることからすれば、絶滅が起こってしまったのは、もともとその種のルールがなかったか、あったとしても人間が容易に破棄できるほど拘束力が弱体化していたかどちらかでしょう。他に、熊の絶滅をもたらすような自然的要因がなかったのなら、ヨーロッパにおける熊信仰の希薄、もしくは変質が関係していると考えても大過はないと思います。キリスト教信仰の浸透によって、ヨーロッパの自然観には、森林=野生=古宗教(ドルイド教など)/都市・農村=文化=キリスト教との二項対立が生まれ、後者を神の威光・恩恵が行き届く領域、前者を悪魔や魔女の支配する領域と位置付けて、後者による前者の駆逐=開発が奨励されてきました。その過程で、多くの動植物がヨーロッパ地域から姿を消していったのです。現在、ヨーロッパ諸地域にも、クマ祭りと称するものが行われています。そのクライマックスは熊が人間になる(熊のぬいぐるみ、毛皮を被った人がそれを脱いで正体を現す)場面で、本来は熊/人間の置換可能性を語っていたのでしょうが、キリスト教的に野生の熊が文化の人間になるという形へ解釈しなおされています。排除されるべき存在に零落したという点では、日本列島の熊と同じ運命を辿ったのだといえるかも知れません。