AMSによる実年代計測で、弥生時代の開始期が従来より500年遡る可能性があるとのことですが、これが事実であるならば、土器の編年や中国・朝鮮との国際関係に関してもさまざまに見解が変わってくるのではないかと思います。先生はどのように思われますか? / AMSによる科学的な測定結果をすぐに採用せず議論になるということは、他にどのような反論があったのでしょうか。

厳密にいうと、弥生時代の開始時期がB.C.960〜B.C.915頃に比定され、早期・前期が大きく間延びする可能性が出て来たわけです。ご指摘のように、これまで積み上げてきた様々な議論との繋がりがありますので、その整合性をめぐる議論、抵抗が強いといえるかもしれません。歴博側も批判に答える新研究を逐次発表していますので、今後、より多くの試料によって実年代の更新が進めば、議論も落ち着いてくるのではないでしょうか。しかし、そもそも考古学においては、土器や青銅器など時代の異なる遺物の配列によって相対年代を決定し、そこから試料を用いて実年代を推定してゆくという方法が採られています。であれば、放射性炭素同位体による年代決定へ安易に寄りかかるのではなく、第一に型式学的な研究を厳密化してゆくのが先であるという批判は、意味を持っていると思われます。