日本の昔話には、山姥が悪役としてよく出てくる印象があります。これは、子供だけで山に入ってはいけないという警告的なメッセージであるとともに、姥捨の文化が背景にあるような気もします。姥捨の罪悪感を払拭するために、老女を悪人に仕立てたのではないでしょうか。

なるほど、そういう解釈もありうるかもしれませんね。一般的には、山姥には、里の人間にとって有害な部分と、恩恵を授けてくれる部分の両義性があると指摘されており、これは山の神の性格に基づくと考えられています。日本列島で崇拝されてきた自然神は、概ね、適切な祭祀を怠った場合に祟咎(災害など)を下す面と、豊穣をもたらし生活を保障する面との両義性があると考えられており、山姥はそれが世俗化してきた姿、あるいはそれが投影された姿であるというわけです。いわゆる金太郎伝説では、彼を育てたのは山姥ということになっており、必ずしも悪役のみを割り振られているわけではないのです。