東日本大震災から、東北植民地論なる言説がまことしやかに囁かれているが、「裏日本」や「山陰」なる言葉があるように、日本の地方は少なからず大都市圏の「植民地」となるのではないか。東北だけを取り上げる現状には疑問を覚える。

まず、地方が大都市圏の「食いもの」にされているという情況は、以前から社会学などで指摘され、その偏重をどう是正するかという議論は、1980年代以降脈々と続けられているので、東北だけが取り上げられているのではありません。また、「裏日本」は差別的表現ですが、「山陰」は、山の北・河の南を「陰」といい、山の南・河の北を「陽」という中国文化の基本的な地名表記で、差別ではありません。この呼び方が出来上がった古代では、山陰地域は、むしろ朝鮮の優れた文化が入ってくる表玄関です。東日本大震災以来東北へ注目が集まっているのは、原発の問題を含め、それまで隠蔽されてきたこと、みてみぬふりをされてきたことが、震災被害を通じて一気に表面化してきたからです。また、東北は古代以来中央からの抑圧を受け続けてきた地域ですので、現在に至るまでそれが継続していることをあらためて問わねばならない、という倫理的な振り返りもあるでしょう。さらに東北が特徴的なのは、青森の三沢基地の存在です。現在政治学などで議論されつつありますが、日本国内に116あるアメリカ軍基地のうち、自衛隊の陸海空3部隊、アメリカ軍の陸海空・海兵隊4軍がすべて集結しているのは、沖縄のほかは青森のみです。三沢はアメリカによって、冷戦時代、ソ連陣営に対地核攻撃を行うための施設としてずっと位置づけられてきました。そのため、国内のアメリカ軍基地における地位はトップクラスで、エリートが集結しており、現在も、イスラム国やシリアを攻撃する爆撃機は三沢から発進している。よって、テロの標的とされる危険性は、充分過ぎるくらいにある(『東奥日報』の斉藤光政記者が、この件については長く追跡取材しています)。太平洋岸各地の原発、各関連施設を含め、そうした危険性を持つ施設が、なぜ東北に集中してゆくのか。歴史的過程を踏まえて考えなければならないということです。