確かに、アイヌや琉球の文化を無理に日本の文化と同一視する必要はないと思います。しかし、北海道も沖縄も現在は「日本」であり、彼らの権利をその他の県の人びとと分けて考える必要があるのでしょうか。

気持ちは分かりますが、そのあたりの判断は、アイヌの人びと、沖縄の人びとが、彼ら自身で行うべきことですね。究極的には、国民国家日本への帰属/独立の決断も含めてです。なぜならいうまでもなく、近世から近代へかけての日本が、彼らを暴力的に帰属させ、どの文化の独自性を奪って同一化政策を進めてきたからです。国連が日本へ勧告を繰り返しているのは、国連総会第61会期(2007年9月13日)で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」に、日本は賛成票を投じたにもかかわらず、琉球を「併合」以前に独立した主権国家であったと認めていないためです。これは、琉球を先住民として公式に認めてしまえば、この国連宣言に従って種々の便宜を図る責任が生じ、例えば、アメリカ軍の基地を一方的に押しつけるなどの政策が採れなくなるためです。アイヌについても、なんと2008年の国会決議まで、先住民という認定をしていませんでした。そのうえ現在でも、「アイヌ民族はもはや存在しない。不正な補助金受給者の泥棒だ」という、ヘイトに近いキャンペーンまで行われる始末です。沖縄については、「同じ日本なのだから日本全体のことを考え、基地を受容すべき」との議論、アイヌについては、「日本によって侵略された先住民というけれど、明治以前の北海道は日本ではなかったのか」という議論が、さまざまなところから噴出しています。たとえ好意からであっても、「同じ日本」という括り方には、充分に慎重でなければなりません。

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日本会議北海道支部による、北海道博物館への公開質問状